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独りの少女の小さな日常

 


誰もいない個室で小さく深呼吸をする少女が一人。
寝巻き姿に外套を羽織っただけの格好でぽつんとベッドに一人だ。
この時代にはやや青白い不健康な肌の色。そして華奢な体型はまるで病人のようであった。
そんな少女が、窓からのそよ風に耳をすませている。目を閉じ、小さく微笑んでいる様子からは、可愛らしくあどけない少女のそれであるのだが。
暫くして静かに目を開けると、つ、と部屋の中の虚空を見つめる。
「そこにいらっしゃるのは、どなた?」
口を開いてそんな言葉を発した。まるで何もない虚空に、さも誰かがいるかのように。
尋ねた後に突然ころころと鈴を転がしたように笑う。そしてまた二言三言何かを尋ねると、嬉しそうに微笑んだ。
そう、彼女は稀人と呼ばれる、人ならざる者を見、言葉を聞き、話をすることのできる人間だった。但し使役するようなことはせず、ヒトに悪意のない影物を友とし、寂しい独りの時間をお喋りで潰しているのだ。
彼女…珠子は、稀人の中でも少し変わり者で、祓う力が殆どない代わりに呼び集めやすく憑かれやすい体質の稀人である。度々体調を崩し、こうして自室に篭もることが多いのも、体質によって影を体内に取り込みやすいが故であった。特に濃い影である、悲しみや憎しみといった感情は共感しやすいのか取り込みやすく、簡単に体調を崩してしまう。しかし先にも述べたように悪意のない影物を友としており、元々好奇心旺盛な一面もあってか、影物とのお喋りは珠子にとってとても大切な時間である。近くにいるだけでどんどん影を取り込んでしまい、咳き込むことが多くなろうとも、素敵な時間であることに変わりはない。
今日もこうして窓を開けて空気を入れ、ベッドから上体を起こし、友と会話を楽しんでいた。
ちりり、と小さな鈴の音が響く。窓から小さな友がやってきた音だ。
微かに香る陽の匂いと、小さな友の咥える野の花に、珠子の顔が綻んだ。
「今日も来てくださったのね。すごく嬉しい…。今日はどちらに遊びにいらしていたのかしら?」
早速土産話を聞こうと友を招き入れる。
窓の外では人々の賑やかな声と、小鳥達の歌が溢れていた。
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